かつてハイヒールは、私の中で「大人の女」の象徴だった。
ハイヒールの靴音を響かせながら颯爽と歩く大人の女性に憧れた。
ハイヒールの似合う女性は仕事も出来そうだと思っていた。
大きくなったら自分も履こうと決心した。
その後私は十分大きくなったが、依然としてハイヒールを持っていない。
きっとこれからもずっと持たないと思う。
なぜかと言うと、まず第一に私は割と背が高い方で、ハイヒールを履くと大女になってしまうからだ。
第二に、これが致命的なのだが、ハイヒールで颯爽と歩くことが出来ない。
なぜ持っていないのに歩けないと分かるかと言うと、以前デパートデパート服の試着をした時にお店の人がハイヒールを合わせてみようとしたことがあるのだ。
あのぎこちない足の運びと不安定感。
慣れれば歩けるようになる、と金髪巻き髪の店員は言ったが私にはそうは思えなかった。
慣れる前に間違いなく捻挫もしくは脱臼をするだろうと思った。
しないとしても、そういうふうに思ったというだけで、ハイヒールを履いてはいけない気がした。
その日私は、自分はハイヒールの似合う女には一生なれないだろうと悟った。
だから尚更、ハイヒールは私の憧れであり続け、道行くハイヒールの女性は今でも私の目を奪う。